サイモン・マースデンの写真集の日本語版は数が少ないのですが、本書もその中の1冊になります。
古城や廃墟など、主に廃れた場所が題材となっています。
建物や風景の魅力、造形美のようなものを独特の赤外線カメラによって捉えています。
最近廃墟等が一種のブームを呼んでいるようですが、彼の写真は一過性の流行に囚われない普遍的価値があると思います。
退廃的なものを「ゴシック」と一括りにする風潮もありますが、彼の写真を見ると、その建物や風景の辿ってきた歴史、数々の出来事に思いを馳せずにはいられません。
彼の写真は必ずしも「ゴシック式」の建物ばかり撮っているわけではありませんし、確かに廃墟もありますが、退廃的とも限りません。
今なお堂々と建っている城や城壁は、後世の人間がそれに与えた身勝手なカテゴライズ等をはるかに超越しているようにさえ思えます。しかし残念な点は、写真に付随する文章がワンパターンで安っぽいことです。
本当か嘘か分からないような噂話。
惨殺や拷問、処刑等。
これらが延々と続きます。
建物や風景自体に興味を持っていたのですが、そこにまつわるありふれた怪談のような噂話を見ると残念な気分になります。
このようなものを求める人も確かにいるとは思いますが、
写真が非常にリアルでいい物なだけに、文章にはがっかりさせられます。
確かにタイトルは「悪霊館」ですが、純粋に建物を楽しみたい人には文章は余計に感じられるかもしれません。
その建物が何の目的で建てられ、なぜ廃墟となったのか等、現実的な事柄を載せたほうが写真をより引きたてるのではないかと思いました。